テニス界の偉業ゴールデンスラムとは?達成者や難易度を解説

2024-08-09更新
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監修
ゴンちゃん
テニスベア・アンバサダー
慶應義塾大学ではレギュラー2番手として、全日本学生テニス選手権大会や全日本大学対抗テニス王座決定試合で活躍。卒業後はYouTuberとして活躍し一躍有名に。2020年12月よりテニスベア・アンバサダーとしてテニスベアに参画。

ゴールデンスラムという言葉をご存知でしょうか。似たような言葉で、テニスやゴルフなどで言うグランドスラムならば、聞いたことがあるという方もいるかもしれません。

一般的には聞きなれないゴールデンスラム。テニスの歴史を紐解いてみても、この偉業を達成したプレーヤーは、ごく僅かしか存在しないのです。最近ではジョコビッチが達成したということで知った方も多かったのではないでしょうか?

この記事ではゴールデンスラムの定義と、達成したプレーヤーについてご紹介します。

グランドスラムとは

ゴールデンスラムの前に、まずはグランドスラムについて見ていきましょう。なぜなら、ゴールデンスラムを達成するためには、グランドスラムを制覇しなければ資格要件を満たさないからです。

グランドスラムとは、国際テニス連盟が定めるテニスの主要大会のことをいいます。具体的には、全豪・全仏・全英・全米の4つのトーナメントを指します。 また、グランドスラムは1人の選手がこの4つのトーナメントで優勝することや、その記録を指すこともあります。

全豪オープン(オーストラリアン・オープン)

全豪オープンは1月のオーストラリア、メルボルンで行われますが、南半球にあるオーストラリアの1月は連日のように猛暑に見舞われます。有力選手の多くは冬真っ只中の北半球からやってくるので、このような真逆の環境のもとコンディションの調整が上手くいかないことも多々あります。

また、シーズンオフの期間が明けて直後のグランドスラムであるため、トレーニングの成果が顕著に現れる大会でもあります。サーフェスはハードコートを使用しています。

全仏オープン(フレンチ・オープン)

全仏オープンはパリのローランギャロス(現地ではローランギャロ)で開催されます。特徴的なのはレッドクレーという赤土を使用する、クレーコートのサーフェスで大会が行われることです。

クレーコートは、芝やハードコートに比べると球足が遅く、粘り強いプレーを身上とするストロークプレーヤーがクレー巧者として活躍するため、パワーとスピードを武器にする多くの一流選手が苦戦を強いられてきました。

球足が遅いため芝やハードコートでは決まっていたはずのショットが追いつかれラリーが長くなり、心身ともにタフな試合になることが多いのも特徴です。

全英オープン(ウィンブルドン)

テニスのあらゆる大会で最も権威があるのが全英オープンです。ウィンブルドン選手権とも呼ばれるこの大会は6月最終週に開幕し、芝のコートで覇権が争われます。

芝のサーフェスは球足が速く、ボールが弾まず滑ります。また、大会が進むにつれ芝が剥げてくることにより、イレギュラーバウンドが起こりやすくなるため選手を悩まします。

この時期のイギリスは降雨が多いため、屋外のコートを使用するウィンブルドンではたびたび試合が中断されもします。

全米オープン(USオープン)

年間を通して、グランドスラム大会の最後として開催されるのが、ニューヨークのフラッシング・メドウを舞台とする全米オープンです。

大都会で行われていることもあり、以前から問題視されていた試合中に上空を行き交う飛行機の騒音は、選手の集中力に影響を与えると言われます。

加えて、新しく開設されたスタジアムは開閉式の屋根が設置されているのですが、屋根が閉じられると観客の話し声が場内に反響し、耐えがたいほどの騒音になるのです。しかし、スポーツ観戦文化が発達しているアメリカならではと言うこともできます。

また、全米オープンもハードコートで行われるのですが、セメント等を素材としているため足腰への負担も非常に大きくなります。前述した全仏オープンとは違った意味でタフさが要求される大会ともいえます。

このように、グランドスラム大会は様々なサーフェスで戦うことに加え、気候をはじめとする試合環境にも特徴があり、その異なる条件をクリアしてこそ栄えあるグランドスラマーとしての名を馳せることができるのです。

ゴールデンスラムとは

ゴールデンスラムとは、前述した4つのグランドスラム大会に加え、4年に1度開催されるオリンピックも制覇することをいいます。

テニスの最高峰のトーナメントであるグランドスラム4大会を制覇するだけでも至難の業です。サーフェスを含めた環境は、それぞれの大会によって異なりますし、年間のツアースケジュールを考えても調整期間は非常に短いです。

それに加えて、4年に1度のオリンピックでも優勝しなければいけないのですから、その偉業は想像を絶します。

オリンピックタイトルを獲ることの難しさ

第一に、何といっても4年に1度しか開催しないことが挙げられます。

毎年行われるグランドスラムに対して、あまりにもタイトル獲得のチャンスが少ないのです。その難しさは、史上最高のプレーヤーと呼ばれるロジャー・フェデラーでさえ、未だにオリンピック・チャンピオンの座を射止めていないことからも窺えます。

また、オリンピックは基本的に7月上旬に終了する全英オープンと8月下旬に開幕する全米オープンの間で行われてきました。したがって、この約1ヶ月半しかない短いインターバルの最中の、それも酷暑の中での戦いを余儀なくされるため、コンディションを整えることが非常に難しいことも挙げられるでしょう。

なお、過去にはソウルやシドニーオリンピックは全米オープン終了後に開催されましたが、大会終了後すぐに開幕したため、むしろ例年以上に過酷な日程となりました。

ゴールデンスラム達成者

ここまでゴールデンスラムの偉大さについてご紹介してきました。そのような偉業であるゴールデンスラムを、過去に成し遂げた選手が4名だけ存在します。

それは、シュテフィ・グラフ、アンドレ・アガシ、ラファエル・ナダル、セリーナ・ウィリアムズです。当然ながら、いずれもテニス史に名を残す偉大なプレーヤーです。

ちなみに、シュテフィ・グラフとアンドレ・アガシのふたりは夫婦であることも興味深く感じます。

生涯ゴールデンスラム(キャリア・ゴールデンスラム)

選手生活のキャリアにおいて、グランドスラム4大会の全てとオリンピックで優勝することを生涯ゴールデンスラムと言います。

過去には、アンドレ・アガシ、ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチ、セリーナ・ウィリアムズが成し遂げています。 条件が非常にハイレベルであるため、達成者は非常に少ないです。

先ほどご紹介したフェデラーも達成しないまま現役を引退しましたし、ジョコビッチは2008年に全豪オープンを初優勝してから、2024年のパリオリンピックで金メダルを獲得してゴールデンスラムを達成するまでに、実に16年を要しています。

2022年には、車いすテニスで活躍している国枝慎吾選手がウィンブルドンでの優勝を飾り、悲願の生涯グランドスラムを達成しました。

年間ゴールデンスラム

1年間でグランドスラム大会4冠とオリンピックタイトルの全てを獲得することを、年間ゴールデンスラムと言います。

ここまでご紹介してきたように、キャリアゴールデンスラムも偉大な記録ですが、年間ゴールデンスラムの難しさはその比ではありません。これまで1988年にシュテフィ・グラフしか達成していないことを見ても明白です。

その年のグラフは、まさに向かうところ敵なし、無双状態でした。前年の全英と全米オープンというビッグゲームの決勝で、女王マルチナ・ナブラチロワの前に屈したグラフは雪辱を誓い、さらなる飛躍を遂げたのです。この年を境にして完全にナブラチロワ時代が終焉を迎え、グラフの時代が幕を開けました。

テニス史上、ただ1人しか成し遂げていない偉業、年間ゴールデンスラム。現在はテニス人口も増え、レベルも高くなっているため、二度と達成されない記録かもしれません。

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